担当講義など

教育に対する基本的な考え

理系の大学および大学院で行われるべき教育には2種類あります.1つは,講義と学生実習を中心にした学部生の教育で,もう1つは,卒業研究および大学院生に対する実験室における研究活動に基づいた教育です。これら2つは本来不可分であるべきと考えます。 生物分子科学科では,「生命現象を化学の言葉で語る」を合い言葉に,既成の学問分野の枠組みに捕らわれず,生命現象の謎に挑んでいけるような研究者の育成を目標に教育を行っています。昔ながらの学問分野の分類に従って,他人の書いた教科書をただ漫然と教えていくだけでは,このような教育はできません。そこで,自らの研究体験に基づいて取捨選択しながら,本当に役に立つ事柄を中心に教えていける講義を心掛けています。また,第一線の研究現場では,使うテクニックも日々進歩しています。教える立場である自分が,一線の研究者でなければ,これに続く世代の研究者予備軍であるべき学生達を指導できるわけがありません。時間的制約をなんとか克服しながら,自らの知識と技術が錆び付かないように,日々向上していけるような努力も心掛けています。

ただ,東邦大学の学生の卒業後の進路を考えたとき,必ずしもみなが研究者をめざしているわけではありません。というより,研究者あるいは技術系の職につける人は,むしろ少ないのが実状です。そう考えると,やみくもに研究,研究と押し付けるのは得策ではないかも知れません。大学の教員というのは,講義マシーンでもないし研究マシーンでもありません。講義という形であれ研究指導という形であれ,学生達とは人間同士の付き合いをして,その後の彼および彼女等の人生に何がしかの影響を与えられるような,魅力のある人間でありたいと考えています。

なかなか思い通りにいきませんけど。

基礎化学 (Fundamental Chemistry )

【授業目的 】 生物分子科学科では,化学的な知識や方法を存分に活用して生命現象の本質にアプローチするために化学を体系的に学んでいく。本講義ではその出発点として最も基礎的な部分を扱い,高年次に学ぶ講義や実験の理解に応用できる能力を身につける。
【授業内容】 1. 生命と化学の接点
2. 生体分子を学ぶための基礎
3. 化学結合
4. 生体を構成する分子
5. 生体化学反応
6. 化学と社会の関わり
【関連科目】 基礎化学演習
【教科書】 教科書: 「生命の化学 バイオサイエンスの基礎づくり」 (安藤祥司,熊本栄一,兒玉浩明,高崎洋三著,化学同人)
参考書: 「大学生の化学」(大野惇吉著,三共出版),「岩波講座 現代化学への入門2 物質のとらえ方」(桜井英樹著,岩波書店),「岩波講座 現代化学への入門18 化学と社会」(茅幸二他著,岩波書店),「これはすごい!化学の世界記録集」(化学編集部編,化学同人),「化学の基礎」 (竹内敬人著、 岩波書店)、 「化学 基本の考え方を中心に」 (A. Sherman et al. 著 石倉洋子・石倉久之 訳、 東京化学同人
【評価方法】 基本的には定期試験の結果に基づいて評価するが、 出席も重視する。 また授業中の小テストやレポートも評価の対象とする。 第1回目の授業で化学に関する簡単なテストを行ない、 その結果に基づきクラス分けを行なう。 高校で化学を履修していない場合も考慮して、 可能な限り分かり易く講義する。 また、 化学が得意な学生に対しては、 多少詳しい点まで立ち入って講義する。 

有機化学演習 I (Exercise in Organic Chemistry I)

【授業目的 】 有機化学Iの講義と連動して教科書の問題を中心に演習を行い、知識の定着をはかることを第一の目的とする。
【授業内容】 有機化学は決して丸暗記の学問ではない。膨大な実験事実を羅列的に覚えるのではなく、化合物の性質や反応性を支配している原則を理解し、説明できる能力を身につけることが重要である。重要事項の確認と問題演習を中心に授業を進める。
1. 化学結合と分子の成り立ち
2. 分子の形と軌道の混成
3. 有機化合物の種類
4. 立体配座と分子のひずみ
5. 有機化学反応の種類と反応のエネルギー
6. 有機反応機構とその表現法
7. カルボニル基への求核付加反応
8. 共役と電子の非局在化
9. ベンゼンと芳香族性
10. 有機化合物における酸と塩基
11. エステルの求核置換反応
12. カルボン酸誘導体の求核置換反応
13. カルボニル化合物のヒドリド還元とグリニャール反応
14. 酸素の脱離を伴うカルボニル基の反応
15. 試験
【関連科目】 基礎化学・有機化学 I
【教科書】 教科書:「有機化学」(奥山 格監修・著、丸善)
参考書:「電子の動きでみる有機反応のしくみ」(奥山格、杉村高志著、東京化学同人)「ウォーレン有機化学 上」(野依良治他監訳、東京化学同人)、「ジョーンズ有機化学(上、下)」(奈良坂紘一監訳、東京化学同人)、HGS分子構造模型(丸善)。
【評価方法】 出席と定授業中に随時行う小テストと期末試験を評価の対象とする。 小テストは出席点の対象ともなる。期試験の成績によって評価する。

科学英語 U (Scientific English U)

講義のおおざっぱな内容は以下のようになります。ただし,私は英語教育の専門家ではないし,文法事項をきちんと教えることも出来ないので,そういう知識を得ることは期待しないで下さい。

1.コミュニケーションの手段としての英語
目的:科学の分野特有の表現(のいくつか)が読めて,しかも耳で聞いて理解できるようになること。
数式の読み方,分数,小数,化学式,元素記号,図表,実験器具の名前など。 リスニングも含む。
2.教科書,学術論文を読んで内容を理解するための英語
目的:大学生レベルの教科書または科学雑誌から採った文章を和訳し内容を理解する。
専門用語を覚える。講義の時間中に文章を訳す。辞書を持参すること。

専門用語が載っている辞書類
「リーダーズ英和中辞典 研究社」 「リーダーズ・プラス 研究社」(電子辞書に両方入っている) 「プロフェッショナル英和事典SPED EOS(生命化学編) 小学館」 「学術用語集 化学編」 「化学英語の活用辞典 化学同人」 「生化学・分子生物学 英和用語集 化学同人」 「分子生物学辞典 化学同人」 「Basic英和和英 有機化学用語集 化学同人」 「有機化学用語事典 朝倉書店」 「有機化学・生化学 略語辞典 地人書館」 など

参考書
「Judy先生の耳から学ぶ科学英語 講談社サイエンティフィク」 「話しながら学ぶ化学英語 廣川書店」 「アクティブ科学英語 読解型から発信型へ 三共出版」 「生物工学英語入門 講談社サイエンティフィク」 など

次のWebサイトも参考にして下さい。

ライフサイエンス辞書プロジェクト 

有機化学 II (Organic Chemistry II)

【授業目的 】 有機化学の知識は、 生命科学、特に分子生物学、生理学の分野では学問的背景として必須のものである。この講義では有機化学の体系的な全体像を把握すること、反応論と構造論を中心とする有機化学の考え方を理解することを目的とする。
【授業内容】 有機化合物の性質や反応が一見複雑に見えながら、実際は簡単な原理、法則によっていることを説明する。本講義では有機化学Iに引き続いて基礎有機化学の後半の講義をおこなう。
1. 立体化学I
2. 立体化学II
3. ハロゲン化アルキルI:命名法,製法,反応,求核置換反応
4. ハロゲン化アルキルII:SN1, SN2, E1, E2反応
5. アルコール,フェノール,エーテルI:命名法,性質,合成
6. アルコール,フェノール,エーテルII:合成と性質
7. アルデヒドとケトン:求核付加反応 I
8. アルデヒドとケトン:求核付加反応 II
9. カルボン酸とその誘導体I:命名法,性質,合成
10. カルボン酸とその誘導体II:求核アシル置換反応
11. カルボニル化合物のα置換反応と縮合反応I
12. カルボニル化合物のα置換反応と縮合反応II
13. アミンI
14
. アミンII
15. 試験
【関連科目】
【教科書】 教科書:「マクマリー有機化学概説 第6版」(伊東他訳、東京化学同人)   参考書:「ウォーレン有機化学 上」(野依良治他監訳、東京化学同人)、「ジョーンズ有機化学(上、下)」(奈良坂紘一監訳、東京化学同人)、HGS分子構造模型(丸善)。
【評価方法】 授業中、随時行う小テストと中間、および期末試験を評価の対象とする。小テストは出席点の対象ともなる。
【その他】 関連科目:有機化学演習II(選択科目)は、この講義に沿って教科書の問題演習をおこなう。 出来るだけ履修されたい。

有機分析法(Organic Analytical Method)

【授業目的 】 機器分析の中から、紫外可視分光法、核磁気共鳴法、赤外分光法、および質量分析法を取り上げる。簡単な原理、実際のスペクトルの見方、および、その測定法からどのような情報が得られるかを概説し、機器分析法の選択と簡単な化合物の構造解析ができるようになることを目標にする。
【授業内容】 前半の紫外可視吸収スペクトルと蛍光スペクトルについては、細胞生物学分野で用いられるようなラベル化剤やプローブ分子への応用についても紹介する。後半のNMRスペクトルとIRスペクトルでは、低分子有機化合物の構造解析への応用を中心に講義する。
1. 分光分析の基礎
2. 紫外可視吸収スペクトルの原理と応用
3. CDスペクトルの原理と生体高分子解析への応用
4. 蛍光スペクトルの基礎
5. 蛍光イメージングの細胞生物学への応用
6. 1H NMRスペクトルの原理とスペクトルの読み方
7. 1H NMRスペクトル:構造解析演習
8. 13C NMRスペクトル
9. NMRの応用:2次元NMRスペクトルなど
10. IRスペクトルの基礎
11. IRスペクトル解析の実際
12. 質量スペクトル(MS)の基礎
13. スペクトル解析演習
14. 定期試験
【関連科目】 有機化学 I・II
【教科書】 教科書:なし
参考書:有機化合物のスペクトル解析入門(ハーウッド他著、化学同人)、構造解析学(唐津孝他著、朝倉書店)有機化合物の構造とスペクトル(卯西昭信他著、三共出版)、有機化合物のスペクトルによる同定法(シルバースタイン著、東京化学同人)
【評価方法】 出席と中間および定期試験により評価する。

生物分子科学実験T (Practice in Biomolecular Science I)

【授業目的 】 高年次に受講する実験の基本的な技術を習得することを目的にする。
【授業内容】 コンピュータ(内田、中山)、分子生物学(渡辺直、大富、岸本、永田)、生物学(杉本、小林、柳内)、化学(古田、渡邊総、後藤)に関する基本的な事柄について学ぶ。
1. コンピュータ基礎(ワードプロセッサWORDの使い方)
2. コンピュータ基礎(表計算ソフトEXCELの使い方)
3. コンピュータ基礎(WORDとEXCELを用いた演習)
4. 分子生物学基礎(実験講義、器具の取扱い)
5. 分子生物学基礎(ゲノム DNA の調製)
6. 分子生物学基礎(プラスミド DNA の調製)
7. 分子生物学基礎(制限酵素処理とゲル電気泳動)
8. 生物学基礎(実験講義、器具の取扱い)
9. 生物学基礎(顕微鏡の操作)
10. 生物学基礎(基本組織の観察)
11. 生物学基礎(マウスの解剖)
12. 化学基礎(試薬の調製)
13. 化学基礎(容量分析:中和滴定)
14. 化学基礎(緩衝液の調製と性質I:pH滴定)
15. 化学基礎(緩衝液の調製と性質II:pH感受性色素の抽出と化学合成)
【関連科目】
【教科書】
【評価方法】 出席を必要条件として、実習態度、演習問題、レポートなどにより評価する。参考書の記述をそのままレポートに転記することは認めない。
【その他】 準備するべきもの、集合場所などを掲示により知らせるので、掲示に注意すること。図書館の実習書、図鑑、データ集などを大いに利用すること。

生物分子科学実験W (Practice in Biomolecular Science W)

【授業目的 】 実験を通して化学、生理学、分子生物学の基礎について理解を深める。
【授業内容】 3つの実験の中からいずれか一つを選択する。化学系実験ではペプチドの化学合成反応を通して、分子の物理的および化学的な性質を調べる方法を学ぶ(古田)。生理学系実験では外界や内部環境の変化に対する生体の反応を理解し、さらに染色体や血球の観察を通して顕微鏡の使い方を学ぶ(大島)。分子生物系実験では、ゲノムDNAの調製から遺伝子検索までの一連の操作を通じて、分子生物学の基本的な実験技術およびデータの解析法を修得する(大富)。
1. 化学系実験(アミノ酸の化学的性質:溶解度、呈色反応、TLCなど)
2. 化学系実験(ペプチドの化学合成:液相合成、保護基、縮合反応、NMR)
3. 化学系実験(ペプチドの化学合成:固相合成)
4. 化学系実験(分子模型)
5. 化学系実験(プレゼンテーションとディスカッション)
6. 生理学系実験(魚の体色と、その変化の神経による制御)
7. 生理学系実験(自律神経による腸管運動の制御)
8. 生理学系実験(唾腺染色体の観察)
9. 生理学系実験(血球標本の作製と観察)
10. 生理学系実験(実験結果についてのディスカッション)
11. 分子生物学系実験(マウス組織からのゲノムDNAの調製)
12. 分子生物学系実験(PCR法による遺伝子の増幅)
13. 分子生物学系実験(アガロースゲル電気泳動とデータ解析)
14. 分子生物学系実験(インターネットによる遺伝子解析)
15. 分子生物学系実験(プレゼンテーションとディスカッション)
【関連科目】
【教科書】 教科書: プリントを配付する。
【評価方法】 出席、受講態度、提出されたレポートで総合的に判断する。

生命科学概論

 

生物分子科学特論 I (Special Topic in Biomolecular Science I)

【授業目的 】 3年前期までに学んだ基礎的知識を基にして、理系の枠を越えた総合的な視点から実社会との関わり合いを学ぶことを目的とする。
【授業内容】 毎年、内容の見直しを行う。昨年度は、社会人として最低限必要なマナーに関する講演、自己分析とコミュニケーション能力向上のためのグループワークを企画した。また、様々な業界で働いている卒業生による体験的進路選択アドバイスの講演も複数行っている。
1. 生物分子科学科教員の研究紹介I
2. 生物分子科学科教員の研究紹介II
3. 生物分子科学科教員の研究紹介III
4. 生物分子科学科教員の研究紹介IV
5. 就職活動支援講座:マナーと話し方I
6. 就職活動支援講座:マナーと話し方II
7. 就職活動支援講座:グループワークI
8. 就職活動支援講座:グループワークII
9. 企業が求める人材と社会人基礎力
10. 化粧品業界と研究職について
11. アカデミックポストに就くまで、女性のライフイベントと仕事
12. 医薬品業界とさまざまな職種
13. IT業界の紹介
14. 就職活動支援講座:模擬面接I
15. 就職活動支援講座:模擬面接II
【関連科目】
【教科書】
【評価方法】 出席とレポートの内容により評価する。

分子化学

 

 


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