ケージド化合物の光反応の量子収率の求め方

【1】UVスペクトルを測る

>300 nmの吸収極大の吸光度が1を超えないような濃度の溶液を調製する。Bhcの場合は通 常370 nm近辺に長波長側の吸収極大がある。典型的なモル吸光係数は15,000-17,000cm-1M-1なので,1〜5X10-5Mの溶液にするとよい。
典型的な実験例
(1)0.01 mgまで測定できる電子天秤(Mettler AG 135 2Fの天秤室の天秤)で10 umolのサンプルを量りとって,1.5 mLのマイクロテストチューブに入れる。
(2)モレキュラーシーブで乾燥したDMSO1 mLをP5000のマイクロピペッターで加え,ボルテックスにかけて溶かし,10 mMのストック溶液とする。
(3)これを,1.5 mLのマイクロテストチューブ20〜30本に10 uLずつ分注して,-30。Cのフリーザーで保存する.残りも,例えば100 uLずつ分注してフリーザーへ。
(4)分注しておいたストック溶液10 uL入りのチューブ1本をフリーザーから取り出して解凍しておく。このDMSO溶液に,KMOPS溶液(pH 7.2)1 mL を加える。ボルテックスで混合した溶液を,10 mLのスクリューキャップ付きサンプル瓶(茶色)に移す。さらに1 mLのKMOPSでマイクロチューブを洗い,これもサンプル瓶に加える。8 mLのKMOPSをサンプル瓶に加えた後,しっかりとふたをしてボルテックスをかけ,10 uMのサンプル溶液10 mLとする。

【2】量子収率を求める

照射する光の波長(例えば350 nm)における吸光度が0.1程度になるように溶液を調製する。

量子収率(f)とは、反応分子が吸収した光がどれだけ効率よく反応に使われたかを示す値であり、理論的に f = 生成分子数/反応分子が吸収した光子数 で求められる。 また、以下の式を使うことにより、実験的にfを求めることができる。 f=1/(I0e×103t90%) f:量子収率 (mol/einstein) I0:光量(einstein・s-1・cm-2) e:モル吸光係数 (mol-1・cm-1) t90%:反応率90%の時間 (s) ここで、I0=3.00×10-8 (RPR3500Å×2)、9.706×10-8 (RPR3500Å×4) と求まっていることから、モル吸光係数 (e)と反応率90%の時間 (t90%)を求めることで量子収率 (f)を算出できる。モル吸光係数 (e)は、UV測定により求められた350 nm光照射時の吸光度(A)から、Lambert-Beerの法則 A=eclを用いて算出する。 光分解の反応率90%の時間(t90%)の求め方は、残存率 (% remaining) vs 照射時間 (s)のプロットを1次の指数関数でカーブフィットすることで求められた式(1)から算出できる。 原料の減衰曲線    y = ae-bx …(1) (1)を移項すると、 x = -1/b ln(y/a) …(2) 90%の分解=10%が残存した時間を求めるため、yに10を代入して、 x = -1/b ln(10/a)  …(3) (3)式にカーブフィットにより求められた減衰曲線(1)の係数a、bを代入することで、光分解の反応率90%の時間(t90%)を求めることができる。  光放出の反応率90%の時間(t90%)の求め方は、放出率 (% yield) vs 照射時間 (s)のプロットを1次の指数関数でカーブフィットすることで求められた式(4)から算出できる。 生成物の放出曲線   y = a(1-e-bx)+c …(4) (4)を移項すると、 x=-1/b ln{1+(c-y)/a} …(5) 90%の分解=10%が残存した時間を求めるため、yに10を代入して、 x=-1/b ln{1+(c-10)/a} …(6) (6)式にカーブフィットにより求められた減衰曲線(1)の係数a、bを代入することで、光放出の反応率90%の時間(t90%)を求めることができる。


お問い合わせ:東邦大学理学部生物分子科学科 古田寿昭
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